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ビザ業務 2017.12.04

退去強制処分と裁判を受ける権利

20171205

こんにちは,行政書士の木村です。

 

12月は「師走」と呼ばれ,年末で忙しい時期でもあります。皆様も慌しくされている頃かと思います。しかし,焦らず,確実に新年を迎えることができるよう,お互いに頑張りましょう。

 

さて,先日気になる訴訟が東京地裁で提訴されていました。主な主張として,日本国憲法32条で保障されている「裁判を受ける権利」が侵害されたというものです。

概要としては次の通りです。スリランカ国籍の方が,1987年頃からスリランカの政治団体で活動し,対立する組織から暴行・脅迫を受けるなどしていたようです。その方は,スリランカ国内を転々として逃げていましたが,身の危険を感じ,1999年に来日しました。その後,不法滞在となりましたが,日本で滞在を続けながら,2011年難民申請を行いました。その申請は,「迫害のおそれがない」などとして難民の不認定処分となったため,その方は異議申し立てを行っていました。その間は,仮放免の許可を受けて,東京都や茨城県などで暮らしていたようです。

その後,2014年12月17日,突如東京入国管理局に呼び出され,仮放免の延長不許可と,異議申し立ての棄却決定が通知されました。同時に,その入管の判断に不服がある場合は,この決定から6ヶ月以内に取消訴訟が出来ることも告げられたようです。

その方は,担当していた弁護士に連絡を取ろうとしたものの,弁護士に電話が繋がらず,僅かに与えられた30分の猶予時間も過ぎたため,入管職員に携帯電話を取り上げられてしまったとのことです。不在着信に気づいた弁護士が,電話があってから40分以内にかけ直したようですが応答はなく,その日のうちに弁護士が東京入国管理局に駆けつけて面会を求めたものの,認められなかったようです。そのスリランカ国籍の方は,翌12月18日入国管理局のチャーター機で強制送還させられました。

 

一度強制送還させられると,日本に住所・居所がなくなり,難民不認定を争う訴訟を起こしても却下されることとなります。現在の通説では,日本国憲法は外国人にも「裁判を受ける権利」を保障していると解されており,担当の弁護士の方は,強制送還によって「本来受けられる裁判が受けられなくなった」と主張し,損害賠償を求めています。

 

 確かに,退去強制処分や難民不認定処分について,6ヶ月以内に取消の裁判を提起することができると告げながら,その期間を待たずに,直ぐに強制送還する運用はおかしいと感じます。いざ処分が確定した後,裁判をするかどうか,するとしてどのような主張を行っていくか,その検討の期間を一切与えずに強制送還することは,実質的には取消訴訟は出来ないと告げているのと同義ではないでしょうか。そもそも,取消訴訟において6ヶ月の出訴期間が設定されているのは,長期間裁判ができる状態に置くのは良くないという,行政処分の早期確定と安定化を目的として設けられた規定です。そうすると,裏を返せば,その期間は裁判を受ける可能性がある期間として,行政庁は処分の執行を待つべきではないかと思います。

特に,強制送還のような,裁判を受ける権利そのものが奪われるような処分の場合,なお更そのように対応すべきではないかと思います。とはいえ,現状の入管法では直ぐに執行することも可能となっているため,先日提起された裁判をふまえ,法務省内で検証されることを願うばかりです。

行政書士法人 第一綜合事務所
木村 淳一

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